コールセンター男性

電話がつながらないことは、コールセンターにおいてお客様の満足度を低下させる大きな要因です。

コールセンター白書で取り上げられる「コールセンターに不満をもった理由」のアンケート結果では、以下の項目が毎年上位に取り上げています。

待ち時間が長い
電話がつながらない
オペレーターの知識不足
別の担当者に回された

上記のようなお客様からの不満がある場合、どの程度つながらないのか、どの程度の応対で別の担当者へのエスカレーションが発生しているのかがわからない限り、その対策も考えられません。そこで重要となってくるのが、KPI(Key Performance Indicator)による日々のオペレーションの可視化です。

今回は、KPIの概要とその必要性、計算方法などもくわしく解説します。

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そもそもKPIとは?

KPIは、「重要業績評価指標」と訳されます。ビジネスのゴール(Key Goal Indicator)に向かっている途中段階での指標という意味合いです。 ビジネスのゴールに到達するまでに必要なプロセスが、正しく遂行されていることを確認するための指標として活用されています。

なぜコールセンターでKPIを管理する必要があるの?

コールセンターは、企業活動の顔として重要な業務を遂行しています。しかし、冒頭にご紹介したように、「つながらない」「オペレーター知識不足」など一般的には可視化できない目標が多いため、数値化する必要があるのです。

数値化されたKPIを定期的にチェックすることで、「つながりやすさ」「応対品質」といった定性的な指標から、定量的な数値データによる確認が可能です。結果として、コールセンター業務上の問題点が一目でわかります。

KPIの前にKGI(重要目標達成指標)の設定が重要

KPIとして、どのような項目を取得し、管理すべきかを考えるうえで重要となるのが、自社のコールセンター業務に対するKGIの設定をすることです。ゴールが何なのか目標を定めることで、その途中経過指標となるKPIも決まってきます。

テレビショッピングのインバウンドコールセンターであれば、KGIは売上目標になります。また、テクニカルサポートを行うコールセンターであれば、お客様が抱えていた問題が解決できたのかどうか、高い満足度の提供というKGIになることでしょう。

売上目標のKGIを達成するためには、1時間に何件の注文電話を受けられるのか、1件の電話でどのくらいの注文金額を増やせるのかといったKPIを設定し管理することで、どのくらい目標に近づいているのかを把握できます。

コールセンターで管理すべき代表的なKPI項目

KGIの目標達成に向けて、コールセンターで管理すべき代表的なKPI項目は以下のとおりです。

応対品質にかかわるKPI項目
収益性にかかわるKPI項目
生産性にかかわるKPI項目
業務管理にかかわるKPI項目
顧客満足にかかわるKPI項目

ビジネスの現場で評価指標とされているQCD(Quality/Cost/Delivery)と同様に、幅広い種類のKPIを網羅的に取得し、管理していくことが大切です。

上記の代表的な項目をくわしくご紹介するとともに、各数値の意味合いについて簡単な計算式を含めて解説します。

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応対品質にかかわるKPI項目

コールセンターの応対品質とは、お客様の電話がコールセンターにどの程度の時間で、どのくらい割合でつながるのか、オペレーターが応対した通話内容は妥当だったのかなどを測るKPIです。以下が代表的なKPI項目です。

応答率

応答率とはコールセンターへの電話に対して、オペレーターがどれだけ対応できたかを測る指標です。応答率を高めることは、多くのお客様の問い合わせや要望を受け付けられたことを意味するため、応答率は、もっとも重要な指標のひとつといわれています。

100%に近いほど、お客様の通話を取りこぼしなく応答できたことになります。

【算出方法】:応答数÷総受信件数

ASA(平均応答速度)

ASAは、着信にオペレーターが応答するまでの平均時間です。電話のつながりやすさをチェックするときに用いられます。

ASAの向上は、企業にとってもひとつの課題です。この時間が短ければ受信までの時間が短いことになりますので、お客様としては“すぐにつながるコールセンター”という評価につながります。

【算出方法】:受信時の待ち時間の合計/総受信件数

放棄呼率

放棄呼率は、オペレーターが電話に対応する前にお客様から電話を切られる、もしくはシステム側が電話を切断した比率を表す項目です。応答率とは、対をなす関係といえます。

放棄率を下げるための工夫として回線を増やしたり、IVRのガイダンスをフラットにしたりするなどの対策を施します。

【算出方法】:放棄呼件数÷着信呼件数

SL(サービスレベル)

SLは、お客様からの着信にどのくらいの時間で対応できたかの割合を表すKPIです。多くのコールセンターでは、目標を設けてスピーディーな応答ができるよう工夫を行っています。

【算出方法】:規定時間内に電話対応した件数÷着信件数 x100

モニタリングスコア

モニタリングスコアは、管理者がオペレーターの顧客応対をモニタリングして品質を評価するKPIです。オペレーターの通話を通話録音データから聞き起こし、管理者による評価も定量的な数値に落とし込むことで、受信までの所要時間や処理時間だけでは測りきれない応対品質を分析できます。

【算出方法例】:応対履歴や通話音源を参考に、オペレーターの応対を管理者が5段階で評価するなど

生産性にかかわるKPI項目

コールセンターの運営において、顧客対応における効率は重要です。コールセンターの生産性が低い場合、余計にオペレーター数を増やす、または電話がつながらないことによる顧客満足度の低下などにつながる可能性があります。そのため、生産性に関するKPIを分析することで、生産性の効率化における課題を見つけられます。

ATT(平均通話時間)

ATTは、Average Talk Timeの略で、1回の電話における通話時間の平均を取得します。オペレーターがお客様と、どのくらいの時間をかけて会話を行ったかがわかります。

ATTは、オペレーターの対応をイメージする際にも便利です。ATT(平均通話時間)によって、「クライアントの質問にはっきり回答しているか」や「時間短縮を図るため一方的に話をしていないか」などがイメージできます。短すぎるATTは改善の必要性があるといえるでしょう。

【算出方法】:総通話時間÷総応答呼数

ACW(平均後処理時間)

ACWは、お客様との通話をした後の処理業務(メール送信や入力)にかかった時間です。効率的に業務を進めてACWを短縮することは、 AHT(平均処理時間)を短くするうえでも大切です。

オペレーター業務のスピード、オペレーションの無駄がないか、システムの使いやすさなどをチェックするのに参考にできます。

【算出方法】:合計後処理時間÷総応答呼数

AHT(平均処理時間)

AHTはAverage Handling Timeの略で、コールセンターに寄せられた顧客からの問い合わせに対して、オペレーターがどれたけ時間を費やしたのかを測るための指標です。

AHTの向上はより多くの顧客とつながることを意味しています。スタッフ一人ひとりの生産性を高め、人件費の削減にもつながります。当然AHTは短い方が望ましいです。

【算出方法】:(総通話時間+総後処理時間+総保留時間)÷総応答呼数

稼働率

稼働率とは、オペレーターが顧客に対応した時間の割合を示す数値です。先の応答率とともに、コンタクトセンターの業務において重要な指標です。稼働率は、生産時間(顧客対応や後処理)と非生産時間(待機時間や研修業務)に分けられます。よって、いかに多くの生産時間を確保するかが重要な指標です。

【算出方法】(総通話時間+後処理時間+その他時間)÷(総ログイン時間−離席時間)

収益性にかかわるKPI項目

コールセンターの売上貢献とコストをチェックします。1時間あたりにどのくらいの通話を受けられたのか、受注センターなら何件の受注ができたのかを測ることで、自社のコールセンターの運営に何人のオペレーターが必要で、どのくらいのコストがかかっているかを想定することが可能です。

受注率

受注率とは、通販などのコールセンターで必要なKPIです。自社の商品に興味をもったお客様からのコールの中で、お客様への説明とセールストークを行った結果、購買を決定してもらった受注率を算出します。明確なオペレーターの成績になります。インバウンドコールでも、アウトバウンドコールでも利用されるKPIです。

【算出方法】 応答できた電話のうち、受注につながったコール数

引き上げ率(アップセル率・定期率)

通販や通信キャリアなどのコールセンターに必要なKPIです。自社の製品サービスを購入していただいたお客様からのインバウンドコール、またはアウトバウンドコールを通じて、他の製品サービスのアップセルと定期契約に成功した受注率です。

【算出方法】 受注につながった電話のうち、アップセルまたは定期注文に成功したコール数

CPC(1コンタクトあたりの費用)

CPC(コスト・パー・コール)とは1度の通話にかかるコストを表したKPIです。オペレーターの人件費をはじめ、システム費用や通信費などが該当します。テナントを利用している場合は、オフィスの賃料も含まれます。CPC(コスト・パー・コール)が高い場合、比較的人件費と賃料の安い地方でのコールセンター業務に移転することも考えられるでしょう。

顧客満足にかかわるKPI項目

顧客がコールセンターのサービスに対してどの程度満足しているかを測る指標です。コールセンターへのつながりやすさをはじめ、オペレーターの顧客に対する応対品質が、顧客満足に足るものかどうかを示します。

CSAT(顧客満足度)

SLや応答率が高いコールセンターであっても、応対に対して不満を抱いているお客様が増えていくと、自社の製品サービスに対する悪影響につながります。そのため、CSATも重要なKPIです。お客様が、自社のコールセンターが提供するサービスに対しての満足度をアンケート調査することによって、どのような品質の問題があるのか、お客様の目線から確認できます。

【調査方法例】:応対終了後に、満足度を問うアンケートをSMSやIVRで配信など

業務管理にかかわるKPI項目

コールセンターの業務量に応じて、オペレーターの必要人数を算出し、アサインしています。オペレーターが予定どおりに出勤しない、突然辞めてしまうなどが発生すると、予定の業務量を提供できません。他のKPI項目にも悪影響を及ぼすため、業務管理も大切なKPI指標です。

欠勤率

欠勤率は、出勤予定日のうち欠勤した日の割合です。オペレーター数だけを見ると十分な数がそろっていたとしても、コールセンターの運営に影響が出ます。欠勤率が高いと、実態として日々オペレーターが不足した状態でコールセンターを運営せざるを得なくなってしまいます。

【算出方法】:欠勤日数/予定勤務日数

離職率

コールセンター運営において、離職率はもっとも重要なKPIです。コールセンターの採用は年々難しくなってきています。また、採用と研修に対して時間とコストがかかっています。そのような状態で、離職するオペレーターが相ついでしまうと、コールセンター運営を危うくするだけではなく、採用・研修コストを増大させてしまうでしょう。

【算出方法】:対象期間中の離職者数/起算日の在職者数

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コールセンターの効果を上げるなら外部委託という選択肢も

これまでご紹介したKPIを可視化するためには、KPIの可視化にかかわる仕組みやコールセンターシステムが必要です。また、KPIの値を改善するための策定を考える必要があります。それを自社ですべて用意するのは難しい場合があります。

そのような場合、すべてを自営する必要はありません。コールセンター業務の一部、またはすべてを専門のコールセンター事業者に外部委託することも、効率化させる大きな選択肢です。

専門の事業者であれば、KPIを可視化するシステムや仕組みを用意していますので、安心して任せられます。

まとめ

KPIは、「重要業績評価指標」といい、ビジネスのゴールに到達するまでに必要なプロセスが、正しく遂行されていることを確認するための指標として活用されています。

KPIを設定することで、「つながりやすさ」「応対品質」といった定性的な指標から、定量的な数値データによる確認が可能となり、コールセンター業務上の問題点が一目でわかります。

自社のコールセンター業務の特徴に応じて、KPI指標を選択し、定期的にデータ化していきましょう。その可視化されたデータが期待値を下回っている場合には、改善施策を検討し、それらを実行するサイクルを作り上げることで、KGIに近づいていけるはずです。

もし、KPIマネジメントについての仕組みや設定方法がよくわからない場合は、専門のコールセンター事業者に外部委託するのがおすすめです。すべての業務を外部委託するという選択肢もよいですが、自社のセンターと外部委託先を組み合わせる、業務の繁閑に応じて外部委託先を活用するなどで、委託コストも下げられます。

ニッセンは、カタログ販売を通じたインバウンドコールセンター業務を約50年にわたり提供してきました。KPIの可視化および改善のノウハウをいかして、他の企業のコールセンター業務を支援するサービスを提供しております。KPIマネジメントについて課題をおもちのコールセンター管理者の方がいらっしゃれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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